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選ばれる高級賃貸

ところが後の計画では、エクイティの投資利回りは確かに24%と高いのですが、配当の実額は年間2400万円にすぎないのです。
会社が配当として受け取る金額は半分以下になり、 2700万円(5100万円-2400万円)も減ってしまったのです。
もちろん、後の計画ではエクイティ投資額が5億円減っていますので、その5億円を8.5%以上の利回りで運用できれば問題ないのも事実です。
ところが、そうでないときはレバレッジ効果による利回り上昇を狙いすぎると、逆に会社にとってマイナスになることもあるのです。
IRR (利回り:内部収益率)とNPV (利益額:正味現在価値)の関係についても、これと同じことがいえます。
IRRが高くても利益の絶対額が少ない投資もあります。
投資の判断に際しては利回り(比率)と利益の絶対額の両方のバランスを見ることが重要だといえるでしょう。
バリューアップとは何かバリューアップ(Value upまたはValue added)は色々な意味に用いられていますが、ここでは幅広く不動産の「価値(バリュー)」を「上げる(アップする)」こと全般を指すものとして話を進めます。
すなわち、すでにある不動産をそのままの形でより有効に利用することだけではなく、リニューアル(改修)やコンバージョン(用途転換)などの活用も含め、不動産の価値を上げるあらゆる活動をバリューアップと呼ぶこととします。
賃貸オフィスビルなどに投資する場合、昔はビルの生み出すキャッシュフロー(資金収支)にかかわらず、 「この場所であれば駅前の一等地だから、これくらいの価値がある」とか「将来的に値上がりしそうな場所だから、これくらいの値段でも仕方ない」といった抽象的な考え方で、ビルの投資価値を決めることが少なからずありました。
その不動産を購入することによって、どれくらいのキャッシュフローを得られるかという点は二の次にされ、あくまでビルの建っている土地の持つ将来的なポテンシャル(可能性)によってビルの価値が決められていたといえます。
しかし、今ではこのような考え方は通用しなくなりました。
不動産の価値はその不動産が生み出すキャッシュフローで決まる時代に入りました。
「将来的なポテンシャルが高い」といった抽象的な説明では、ビルの価値が上がることはありません。
そのポテンシャルをどのように生かして、それによってビルのキャッシュフローがどれだけ向上するのかをはっきりと数字で示して、初めてビルの価値が上がることになります。
ビルが生み出すキャッシュフローを向上させることによって、ビルそのものの価値を上げるバリューアップが注目を浴びるようになったのは、こうした考え方の変化があったからです。
新たな時代の不動産投資戦略バリューアップの方法不動産をバリューアップするには、対象となっている不動産のキャッシュフローを改善しなくてはなりません。
キャッシュフローを改善するためには、①入ってくる現金を増やすか、 ②出ていく現金を減らすかのどちらかしかありません。
賃貸オフィスビルであれば、収入を増やすためにはテナントを誘致して空室率を減らすとともに、賃料単価の引き上げ(あるいは引き下げを防ぐ)交渉を粘り強く行うことが必要です。
しかし、ビルの収入増加策を単にテナントとの交渉に委ねるだけでは、なかなかうまくいかないこともあります。
そのような場合、何らかの形でビルの魅力をアップし、ビル自体の競争力を南めることも考えなくてはなりません。
ビル内LANや外部の通信事業者との接続など、ビルの情報化を進めるのも一つでしょうし、ビル内にテナントへのサービス機能(秘書機能、電話FAX受け付け、車・宅配便の手配など)を付加することも一つの方法でしょう。
こうした工夫を、そのためにかかる費用とのバランスを見ながら実施していくことが重要となるのです。
そもそもビル自体の競争力が限界にきているのであれば、大規模なリニューアル(改修)を行うことが必要かもしれませんし、場所によってはオフィスビルからマンションなどへコンバージョン(用途転換)することも検討すべきです。
一方、出て行くお金を減らすためには、ビルの管理運営費用を見直して、一つひとつの項目で削減できるものはないかを地道に検討していくことが必要です。
例えば、ビルの設備管理や清掃を委託する会社を選ぶときは、すべて入札方式(同じ業務を最も安い価格で請け負ってくれる会社を選ぶ方式)とする、ビル管理をできるだけ機械化する、近隣にあるビルをまとめて効率的に管理すべく群管理を導入するなどの方法が考えられます。
また、最近では固定資産税・都市計画税算出の基礎となる不動産の評価額の見直しを行政に依頼して、結果的に税金負担を軽減する例も出てきているようです。
本書の性格からこれ以上の具体策には触れませんが、重要なことは常に総合的なプロパティマネジメント(Property Management :不動産管理)の視点を持ったうえで、キャッシュフローを増やすための対策を行うことです。
ビルとして競争力を増し、収益力を高められるようにマネジメントすることが必要なのです 。
支出を減らそうとして、単純に古くなった設備の改修の手を抜くと、テナント(入居者)からのクレームの原因にもなりますし、きちんと道営されていないビルであるとして、ビル自体の価値が低く評価されてしまう恐れもあります。
逆にテナントを満足させるために、必要以上の内装工事をした結果、その費用負担があまりにも大きくて、ビルの利益が減ってしまうことも避ける必要があります。
つまり、単純に現金の収入を増やすとか、支出を減らすとかいったことではなく、全体としてビルの価値を高めるようにマネジメントしなくてはならないのです。
バリューアップの効果バリューアップによる効果は、大きく分けて2つあります。
1つ目の効果は、毎年のキャッシュフローの増加によって、その不動産に対する投資家の毎年の利益、投資利回りが向上することです。
例えばZ不動産会社が、ビル全体の80%のテナント(入居者)が埋まっている、年間の純営業収益(NODが5000万円のビルを10億円で購入したとします。
このビルの投資利回り(キャップレート)は5% (5000万円÷10億円)となります。
ビル購入後にZ社がテナントを85%まで埋め、ビルの純営業収益(NODを7500万円にすることに成功したとします。
すると投資利回り(キャップレート)は、 7.5% (7500万円÷10億円)に上昇することになります。
2つ目の効果は、毎年のキャッシュフローの増加によって、結果的にその不動産を売却するときの価格が上がることです。
前の例でいえば、年間の純常業収益NODが7500万円になったビルを売却するときに、周辺のキャップレートの相場がビルを買ったときと同じ5%だとすれば、売却価格は15億円7500万円÷5%)となります。
元々10億円で買ったビルが、バリューアップによって15億円のビルに変身したわけです。
毎年の純営業収益(NODの改善効果はプラス2500万円(7500万円-5000万円)ですが、ビルを売れば、プラス5億円(15億円-10億円)もの改善効果となるのです。
ビルのキャッシュフローの改善によるバリューアップ効果がいかに大きなものであるかが、おわかりいただけるでしょう。
景気の低迷が続いているにもかかわらず、賃貸オフィスビルが次々と建設されているので、一部のビルではテナント(ビルを借りる企業・個人)が埋まらず、空室が目立つ状況になっています。

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